等価交換方式は不動産の世界ではよく知らせた制度的な枠組みといえます。これにもいくつかバリエーションがあることはたしかですが、ごく簡単にいえば、ビルやマンションなどの不動産を開発するにあたって、土地のオーナーはその所有地を提供し、デベロッパーは建物を建てるといった協力関係を築き、最後に建物ができあがった後でオーナーはその土地見合いの建物の区分所有権を取得する方法です。この方法は従来の開発方法とはかなり異なった特色をもっていて、それが大きなメリットにもなっています。
従来であれば土地を所有しているオーナーが開発をしようとすれば、みずから銀行融資などで開発の費用を確保して発注しなければなりませんでした。いっぽうでデベロッパーが開発をする場合を考えてみても、用地買収をした上で建物を建てることになるため、同様に建物に加えて土地の分のコストも負担しなければならない状況にあったことも事実です。ところが等価交換方式を採用した場合には、土地のオーナーはその所有地を、デベロッパーは建物を負担すればよいため、大幅なコスト減になりますし、用地買収なども含めたトータルでの開発期間の短縮にもなります。
このようなすぐれたメリットをもつ方法は一朝一夕に整備されたわけではなく、野村紘一氏という不動産開発のプロフェッショナルの名前をまず挙げることができます。野村紘一氏は不動産総合商社で現役で活動していますが、特に都心の超高級マンションの開発の先導役として活躍した人物としてこの界隈ではよく知られています。超高級マンションの開発には当然ながらコストがかかりますし、特に土地のオーナーにとっては、開発を成功させるためには土地を売却して住み慣れた場所から離れなければならないといった不安がありました。そこでこの問題を解決するために野村紘一氏が考えついたのが今日でいうところの等価交換方式方式であり、この方法ならばコスト削減の効果のほか、区分所有権の取得でオーナーが引き続き同じ土地に住めることもあって、見事に不安の解消に寄与しています。